こんな質問を何人かのランドスケープ分野の大学院に進学を検討している学生さんから質問を頂きました。
おそらくランドスケープに興味持ったけど、実際どんなことを大学院でしているのかわからなくて不安に感じている方が多くいらっしゃるんだと思います。
そこで日本のランドスケープ分野の大学院で修士課程を修了した私が、実際の経験をもとに学生生活について紹介していきたいと思います。
この記事を読めばおおまかではありますが、ランドスケープ分野の学生が年間を通してどのような過ごし方をしているのかスケジュール感がわかり、どんなことを学んでいるのかがおおまかに理解してもらえると思います。
なお、私がいた大学院はランドスケープ分野の専門職大学院であったため、リサーチ中心の大学院と比べてプロジェクト型の実践的な教育カリキュラムが組まれていたので、通常とは少し異なると思いますのでその点だけご了承ください。
結論:2年でランドスケープ分野に就職しうる人材として磨き上げるカリキュラム +α 自主性により可能性が無限大に
私のいた専門職大学院の教育カリキュラムは、「ランドスケープ分野のバックグラウンド、知識がない学生が入学してきても、二年間でランドスケープ分野に就職できる人材に育て上げる」ことができることが大きな特徴だと思います。
実際、私の同期は半数以上はランドスケープ学科以外の学部から入学してきていました。
分野もばらばらで、環境学、森林林学、理学、芸術学など多岐に渡っていました。
そういったさまざまなバックグラウンドを持つ学生が集って、二年間学び、卒業後はほとんどランドスケープ、造園系の会社、専門職のある自治体へ就職していきました。
また、大学の講義以外でも学ぶ機会はたくさんあったので、その人自身の行動により成長は無限大に広がると感じました。
私自身、大学院ではあらゆる制度、機会を使い倒して誰よりも入学前よりからの成長度が高かった自信があります笑
少し脱線しましたが、ここから学生生活について紹介していきたいと思います!
1年目
ざっくりいうと、前半は基礎固め、後半は実践というような流れです。
前期
・とにかくランドスケープ分野の基礎を叩き込む
生態学、植物学、園芸学、デザイン学、行政学、都市計画学などランドスケープ分野に必要な基礎的な知識をとにかくインプットしまくる感じの内容でした。
特に必須科目として100種類近くの造園樹木、園芸植物を和名、学名両方で覚えないといけないものは名物科目となっており、みんな苦戦していました。
前期にしっかりと知識を蓄積することにより、未経験や異なる分野から入学した学生も最低限はランドスケープとは何かが理解できるようになります。
自分の場合は、生態学・環境学が学部の専攻でしたので、それらの科目はあまり取らずにどちらかというと都市計画やデザイン、園芸領域の科目を多く取って学んでいました。
要はそこにある環境、生き物の関わりはわかっているから、そこに人が関わって、
自然と人が調和していく空間をつくるため(自然、植物を活用する方法)にはどうしたらいいのか、
いまはどうしているのか知らないとランドスケープは成り立たないと感じていたからです。
前期終了後の夏季休暇も学部のようななんとなく2か月くらい長い時間を過ごすのではなく、
意外といろいろと予定が入り常に何かに取り組むような休暇の過ごし方を私は送っていました。
全学生が共通する夏季休暇の取り組みは以下の通りです。
・インターンシップ
自分の希望する造園、ランドスケープ系の会社、自治体でインターンシップをさせていただきます。これは当時は必須科目で、だいたい2週間から1か月くらいでの期間する人が多かったと思います。
・資格勉強(造園技能士3級、ビオトープ管理士2級、ランドスケープアーキテクト補)
こちらも多くの学生が勉強に励んでいました。特に造園技能士は実技試験もあるので、気温が上がる前に朝早くに制限時間内で石の並べ方や竹垣を組む練習をしている学生が多くいました。
あとは任意でビオトープ管理士2級、ランドスケープアーキテクト補の資格取得の勉強をしました。
合格に向けてお互いに教えあうような雰囲気があったので良かったと思います。
自分は夏季休暇中にこれ以外には以下のようなこともしました。
・中国へ庭園を学びに行く研修へ参加
中国のランドスケープ学科の学生と日本と中国の伝統的な庭園を実際に見に行って、いろいろと学び、それについて議論をして理解を深めるという研修に参加させていただきました。
日本の有数のランドスケープ学科の大学院からも各学校2名ずつ選ばれて参加したので、同年代の学生とディスカッションするのはとても刺激になりました。
また、中国の学生のレベルの高さに圧倒され、もっといろいろと学ばなくてはと思わされたことも良い経験となりました。
・技術士一次試験の勉強
国家資格である技術士試験の勉強もコツコツとしていました。
10月ころに試験があり、割としっかりと勉強しないと受からない内容だったので、夏休みの間からやろうと思って少ない時間でも毎日やるように心がけました。
・留学プログラムの申請書類の作成
2年生になったときに留学したいと思っていたので、それに向けての給付型奨学金の留学プログラムに応募するための申請書類を作成していました。
この申請書類作成のためにいろいろと調べたり、留学予定先とやりとりする必要がありけっこう時間がかかりました…
後期
後期は実践が主な内容となります。
多くの科目が実際に自治体や団体等に協力していただき、クライアントと見立てて計画、デザインを行い、学期末にプレゼンテーションして評価して頂く流れとなっています。
具体的には以下のような実践演習がありました。
- 保全生態学の実践演習
- ガーデニングデザイン、維持管理の実践演習
- 樹木の剪定、伐採などの実践演習
- ランドスケープデザインの実践演習
- 防災計画の実践演習
ちなみに自分の場合は実践演習を3つ取り、技術士一次試験の勉強、留学プログラムへ向けた申請書類の作成も並行してやっていました。
実践演習は普通は一つ、多くても2つ取るのですが、自分の場合は先生からの反対も押し切って3つ取りました笑(前代未聞らしいです笑)
そして学期末には連日徹夜みたいな生活を送り本当に後悔しましたが、やはりかなり成長できたなーと実感しました。
どれだけ切羽詰まったかというと、学期末後にすぐに韓国でランドスケープのセミナーで発表する予定があったのですが、その飛行機に乗る3時間前に実践演習の発表を終えて、速攻空港に移動してギリギリ間に合って機内で発表の準備をするといったような、スケジュール感でした。
今思うとほんとにつらかったですが、いろいろとトライするだけ自信もついていったので喜びもありました。
全体的にはどの実践演習も学生のことを考えてよくつくられており、満足度の高い内容だったと思います。
全体的にはクライアントのニーズをくみ取って計画、デザインするような実践演習はやはりかなり良い経験になると思いますし、就活前にプロジェクトの流れや仕事内容を理解できるのも職種選択の参考になると思います。
ただ、いま振り返ると、そのあとに米国の大学院へランドスケープ留学した経験も相まって、グリーンインフラのようなこの時代に即した実践演習としては物足りなさを感じています。
日本の大学教育もすぐに時代のトレンドを取り入れられるような内容にする仕組みづくりが求められている気がしますし、すぐにカリキュラムに落とし込めないのが残念かなと。
(ここらへんについてはまた機会があれば、留学生活を交えて紹介したいと思います)
そして、2年生になる直前の春休みもいろいろとやることがありました。
・インターンシップ
夏季休暇で経験したインターンシップをふまえて、新進気鋭のランドスケープデザイン事務所でインターンさせていただきました。ここではたった一週間という短い間でしたが、施工現場を見学させてもらったり、進行中のプロジェクトの模型を作成したりと濃い毎日を過ごさせていただきました。
・修士論文の準備
このころには留学プログラムに受かって留学することが決定したので、修士論文に早めに着手して留学前に大方終わらせておく必要がある(特に現地調査)ことから、研究活動の準備を行っていました。
2年目
前期
2年生の前期は、1年生で取りこぼした基礎科目や、さらに知識の幅を広げたい人向けに別の基礎科目履修、資格取得(樹木医補、自然再生士補など)のための追加履修といった内容があります。
1年目でほとんど卒業要件を満たした人は修士論文と就活に注力していました(自分はこっちパターンで+学会発表&留学準備をしました)
後期
・修士論文に注力(ラストスパート)
後期は卒業要件も満たして、就活も終わっている人がほとんどなので、修士論文に注力するのが主流でした。
自分の場合は後期は米国の大学院へ留学しました。修士論文を大方終わらせていたのでリモートで先生とやりとりしながら論文作成を進めました。
おおまかには以上となります!
いかがだったでしょうか。
各学期ごとや資格勉強、課外活動なども今後詳しく記事で紹介していく予定ですので、こうご期待ください。
また、当時はやり切った達成度に満たされて卒業しましたが、いま振り返って学生生活の反省をするとこういうのもした方が良かったかも…と思うことがいくつかあるのでそういったことも今後記事にできたらなーと考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!